私がそう言いかけた時、教室内の空気が一気に変わったのがわかった。
何事かと周りを見渡すと、クラスメイト全員の視線が廊下の方へと向いていた。
その視線の先にあるものを確認しようと、そちらへ顔を向け……私はゴクリと唾を飲んだ。
……天地くんだ。
席が隣。
でも、不良って言われるくらいだから始業式なんてサボるだろうと勝手に思っていた。
だから、びっくりしたんだ。
ちょっと着崩した制服。
歩く度にふわふわと揺れる金色に近い明るい髪。
そして左耳に光る琥珀色のピアス。
ちゃんとこうして天地くんの姿を見るのは初めてだ。
それにしても、綺麗な顔立ち……
「そこ、俺の席なんだけど」
「……っ、ごめっ」
私も隣にいた友香ちゃんも、その場に立ち尽くしていて、天地くんから声をかけられてハッとして、反射的に横へとずれる。
一瞬向けらた鋭い視線。
すごく怖かった。
でも、その後すぐにこれから2年間お世話になる新しい担任の先生が教室へやって来て、短いホームルームを行って。
あの一言以外、天地くんと会話を交わすことも関わることも1度もないまま終わった。



