「じゃああのコンビニまで連れてくから親に連絡して迎えに来てもらえ」



その言葉通り、その人はコンビニまで着いてきてくれて、ずっと私との距離を保ったまま、お母さんが車で迎えに来てくれるまで一緒にいてくれた。


迎えが来たことを確認したその人は、「気をつけろよ」とだけ言葉を残して夜道に消えていってしまった。


今思えば、どんな人なのか……せめて名前だけでも聞いておけば良かったと思っている。


だって、私の命の恩人なんだから。


まだお礼が言えていない。


せめて「助けてくれてありがとうございました」と一言お礼を伝えたい。


でも誰かもわからないその人に会えるわけもなく、あれから随分と時間(とき)が過ぎた。


私が男性恐怖症を発症してしまったのは、この過去が原因。


このせいで、身内以外の男の人と関わることが怖くなってしまった。


あれから2年近く経って、いつも隣にいてくれる友香ちゃんのおかげもあり、症状はだいぶ落ち着いてきている。


ただし、トラウマで完全に乗り越えることはずっとできないでいた。