こんな溺愛,ありですか?

兄貴面でたまに顔を会わせては遊んでやって。

頼まれれば勉強だって教えるようになって。

静香が中学の頃優等生だったのは,タダ働きの俺の働きに他ならない。

それくらい勉学において静香はどんくさかった。

いつだったか,多分それより前の。

俺が高校より先の進路に悩み始めた頃。

唐突に,静香が言った。



『辰馬くんは何になるの?』

『さーなぁ』



適当に返している俺の耳に,カリカリとんとんとした音が心地よく通っていった。

次にはくすくすと今より高くて落ち着きのない声が音。



『辰馬くんは頭がいいから,分かるだけじゃなくて教えるのも上手いよね。高校は全部のテストで70点以上とらないと追い出されるって聞いたけど,辰馬くんが先生だったら私,絶対取れると思う!!』



当時,赤点のことを言っているのか訳の分からないデマを信じていた静香のその言葉に,俺は少しだけ考えた気がする。

先生。

ヤンチャで,雑で,めんどくさがりの俺に対してそんな言葉を向けるのは,後にも先にも静香だけ。

俺一人では想像すらしなかった未来だった。

だからこそ,少しだけ興味を引かれた。



『辰馬くんが学校の先生なんて,ちょっと格好いいよね!!!!!』



だから少しだけ,あの時真面目に考えてしまった。

静香がそういうなら。

俺は俺の人生を,簡単に決めた。

あの時既に,運命は決まり,俺と静香の道が分かれたんだと思う。