ータッタッタ



一歩ずつ距離が縮まっていくなかで,私は鞄の持ち手をぎゅぅっと掴む。

山宮くんから視線を感じるけど,取り繕う余裕がない。

私は無意識に山宮くんに近づいて行く。

顔はあげないけど,山宮くんにすがる様だった。

勝手に頭の中で,私の肩に手が伸びてくる映像が流れる。

それが私の恐怖心を助長させていった。

やけに周りの動きが遅く感じる。
それは後ろの人の動きも。

耐えられなくてぎゅっと目をつぶった時,その足音は私の横を過ぎていった。

私は呆然と立ち止まり,足の甲に視線を止める。

いつの間にか私は息を止めていたらしい。



「しーちゃん? ほんとどうしたの? さっきからずっと顔色が悪い…なんか買ってくる?」

「ゃ…いかないで…お願い」



私が山宮くんを見上げて懇願すると,山宮くんは私を腰を,優しく抱き寄せた。



「ん…分かった」



山宮くんの体温を感じた途端,私の下半身が無くなったみたいに軽くなる。

その感覚に驚いている間に,気付けば私の膝が地面についていた。

え……?

力が,入らない…

 

「しーちゃん!」



私につられて体勢の低い山宮くんが私を支えているのが見える。