こんな溺愛,ありですか?

「なんでずっと黙ってるの? なんとか答えなさいよ」



目の前で長いストレートの髪が揺れる。



「え?」



何か,喋ってた? そんなことにも気づけないなんて,そろそろ本格的にヤバイかもしれない。

だって,こんなにも視界が揺れてる。

均衡感覚が上手く掴めない。

それでも頑張って踏ん張ったとき



「さっきからなんなのその態度,ふざけないで!」


ードッ

嘘……

ガッと肩に痛みが走る。

もう,またアザ……

そこでフッと一瞬だけ意識がとんだ。



『ヤバ……ぁっ…で』

『し……ゃん!』



逃げようとする女の子と,誰かの必死な温かい声。

そこで,映画の終わりを告げるようなまっ暗闇に覆われる。

何も,感じない。