こんな溺愛,ありですか?

勘違いしちゃう状況になるのは,嫌。
とか,なにそれ……

ほんと,山宮くんといるとワケわかんなくなる。



「取り敢えず,帰ります。あっありがとう!」



山宮くんの制止する声を背に,私は駆け出す。

真知さんに早口で挨拶をして,私は店を出た。

いちいち近いんだよ,山宮くんは!

今までクラスメートと話すことすら少なかったくせに。

もやもやが心に広がっていく。

山宮くんがあんな風にするのは,慣れてるから?

まるで何かから逃げるようにして走る私。

落ち着いたとき,私は気がつく。

気のせい,気のせい。

気のせいじゃ…ない。

ゆっくり,周りを見渡す。

どこ…

誰もいない。

夜の暗闇がこんなにも怖かったことはない。