こんな溺愛,ありですか?

「じゃあ俺,裏口から入るから」



山宮くんはそう言うと,私とは別の道に入る。

私は本当にあの店が山宮くんのお家なんだと思った。

私はほんの少しだけ距離が少なくなる路地裏を通ろうとして



「なんで……」



人の多い通りへと足を向けた。

山宮くんに振ったばかりの手が,震える。

気のせいかもしれない,きっとそう。

朝の事で不安なだけ。

そう思いつつも,自然に早足になる。

ーカランカラン



「あらいらっしゃい,静香ちゃん。……ちょっとなんかあった? 顔色悪いよ」



小気味良い鈴の音を聴きながら入店すると,真知さんが心配そうに駆け寄って来た。

私,そんな顔してる?

すると丁度お店の奥から,エプロンをつけながらやって来る山宮くんが見える。