こんな溺愛,ありですか?

山宮side

「待たせといてなんだけど……やっぱり今日は」



ようやくやって来たしーちゃんは,開口一番にそんなことを言う。



「やめないよ。約束したでしょ? それに,突然離れる方が不自然」



俺が苦し紛れにそう言うと,しーちゃんは無理やり納得したような顔をした。

しーちゃんの言いたいことは分かる。

その上で,俺が手放したくないだけ。

卑怯なのは,この上なく承知している。

でも,周りの人間が関係ないこともほんと。

俺にしつこく付きまとった挙げ句,ここにいるとうるさい女子はあしらって帰した。

人の迷惑を考えない人間は嫌いだ。

するとこちらにくる途中でしーちゃんがキョロキョロしていたから,やっぱり良かったと思った。

邪魔されたくなかっただけだけど。



「今日も早かったね」



思ったより。



「だってすっごく急いで終わらせたからっ」



しーちゃんはどこか得意気に答える。

俺のため?

そんな意地悪な質問をしたくなった。