こんな溺愛,ありですか?

小さな音に私がん? と顔を向けると,山宮くんの消ゴムが私の足元に転がっていた。

山宮くんはいつの間にか眠っていて,肘が当たってしまったようだ。

私が拾おうと手を伸ばすと,山宮くんがトッと椅子から降りてしゃがむ。

それならと手をひきかけた時

ーパシッ

だめと言うように掴まれた手。

え? と顔を山宮くんに写すと,じっと見つめられる。

そして見せつけるかのように私の手を自身の頬に当て,その後私の手のひらに唇を当てた。

薬指と小指の間に挟まる山宮くんの鼻。

その形の良さがはっきりと指を伝って分かる。

はっと漏らされた甘い吐息。

驚いて手を取り返そうとするも,叶わない。



「……よそ見,しないで」



意味が,分からない。

私は今,確かに山宮くんと目が合っている。

恥ずかしいほどに。