「なんでいつも私に持たせるの。自分で運びなよ」



人が周りにいなくなって,私は小さく抗議する。



「俺は窓と空き教室の鍵も閉めなきゃなんねぇの。片手にそんなもん持ってたら疲れるだろ」

「それで女子生徒頼るなんてどんだけひ弱なの」

「なんだと?」

「何でも」



私は心置きなくべっと下を出して見せた。

するとその舌を本気でつかもうと手を伸ばしてきて,私は信じられないと引っ込める。



「辰馬くん,そういうとこあるよね」



皆には話してないけど,先生とはいとこ。

だから,辰馬くんが現在21と地味に若く,彼女募集中なのも知っている。



「あっ私ね,友達できたよ!」

「あっそ」

「あっそって」



私がなんとなく話題をふっても,興味なさそうな返事。

私が頬を膨らませると,ようやく聞く気になったのか,めんどくさそうに私を見た。