~総合医学研究所~


「ラブさん、はじめます」

「はい。お願いします」

少しやつれた顔立ちのラブが、ベッドに固定されていた。

麻酔が彼女の腕に注入される。


数日前、彼女の細胞組織を研究していた間宮《まみや》は、驚くべきことを発見した。

彼女の組織は、地球上のあらゆる病原菌を寄せ付けず、まれに犯されたとしても、瞬く間に免疫を持ち、破壊された組織は、数秒で回復したのである。

その再生能力のテストであった。

「ラブさん・・・本当にいいのですね?」

医師の問いかけにうなづくラブ。

「麻酔から数分後、ラブの腕の表面に浅くメスが入る」

ラブの顔を伺うが、変化はない。

そのまま、メスを進める。
切られた傷口からわずかに血がにじみ出す。

その時、間宮が駆け込んできた。

「待って!だめだ❗️」

その声に驚き、握っていたメスが、ラブの腕に深々と突き刺さる。

「しまった、ラブさん⁉️」

ラブは瞬き一つしなかった。
息を切らしながら、間宮が告げる。

「ラブの細胞はとてつもなく強いんだ。だから・・・」

医師も気付いた。

「ま・・・麻酔は効かない⁉️」

「ラブさん、ごめんなさい。もっと早く気がつけば」

間宮がラブに近づく。

そこで、ラブのかすかな微笑みを見た彼らは、驚くべき事実を目の当たりにした。

薄皮を10センチほど切ったはずの跡は既になく、突き立ったメスの口元も、すでに治癒しはじめていたのである。


「大丈夫です。良かったらこれ、抜いてくださる?」

医師がゆっくりメスを引き抜く。

「ラブさん、痛みもないのですか?」

「私は、人間の持つ6つの感覚を操ることができます。痛覚を遮断すれば、痛みは感じません」

「そ・・・そうなんですかぁ。良かった」

その場へへたりこむ間宮。

ラブが出て行った後も、彼はそのまま考え込んでいた。

(我々はいったい何をやっているんだろう・・・。あんなにいい人に、こんな仕打ちをして・・・。人間の・・・・・・んっ?6つの感覚・・・って、第六感まで操れるってことか⁉️)

驚きながらも、あの人なら…。
彼は、そう思った。


その後も、数々の実験が行われた。

その結果はことごとく、現代の科学では理解できないものであった。