腰元から抜き放った刀は、左手に握られたまま。

前に付き出した右手には、《《羽》》が握られていた。

的《まと》にぶら下がった林檎が、スクリーンにズームアップされ、羽のない矢を見た時、スタジオ内が驚きの声に包まれた。

高速度カメラの映像が流れる。

矢は、ラブによって切断されていた。

目隠しをした彼女は、矢の音を聞き取り、目の前を通過する瞬間に切断したのである。

5メートルからの矢を正確に捉え、矢の進行を妨げず、超スピードで切断する。

大きな拍手が響いた。
それに一礼するラブ。

この後暫くは、殺陣《たて》のアクションで盛り上がった。

協力してくれた高杉道場のメンバー達。

「私に当てれたら、なんでもしてあげちゃうから、マジでお願いしま~す」

と言われ、真剣そのものであったらしい。

結果は、20人の誰一人として、何もしてもらえなかった。


そして、最後の幕が開いた。

目隠しをし、今度は弓を構えるMr.。

目隠しをする前に置かれていた1個の林檎は、今は左右2メートル程離れて、2個になっていた。

そして、さっきまで林檎があった場所には、ラブが立っている。

既に頭上に構えられた刀《かたな》。

余分な服は脱ぎ捨て、胸部のサポーターとショートパンツ。

皆はこのセクシーな姿に一瞬息を飲み込み、これから始まる危険なショーに緊張していた。

衣服は動きを鈍らせる為、脱いだのである。
真っ直ぐに矢先を見つめるラブ。

Mr.は、それを知らない。

沈黙…。



「Come on❗️」

「ビンッ!」

彼女の掛け声で矢は放たれた。

「フッ!」「ヒュン」

「キャー❗️」「バシュ!」

女性タレントの条件反射的な悲鳴。
同時に矢が突き立つ音。


矢は縦に真っ二つに切られ、ラブの両頬僅か1cm辺りを通り、見事左右の林檎に命中していた。


「ゥオォォ~⁉️」

拍手する者、涙を流す者、叫ぶ者、様々に感動を表現していた。

「トーイ・ラブ さん、今年最初の奇跡でしたぁ!スゴイ❗️」

スタジオは割れんばかりの拍手に包まれた。



こうして、彼女の熱い1年がスタートしたのである。