イノセント・ハンド

少女が紗夜の手を握る。

紗夜が少女を見下ろす。

富士本がその光景を見つめ、目を細める。


その頃、東はパニック状態に陥っていた。

(そんな、そんなばかな・・・じゃあ、この子は・・・?)

そう思った時、何かが彼の手を掴んだ。

『ひっ!!』

バックミラーに何かを感じた。

恐る恐るミラーを見る。


『うっ!うわぁーっ!!』

バックミラーには、目を血走らせ、恐ろしい形相の少女が映っていた。

『た、助けてくれーッ!!』

前方に迫るカーブ。

東の手は、何かに押さえられ、ハンドルが切れない。

『ギャーッ!!』

次の瞬間、対向車線にはみ出した車は、向かってきたトレーラーによって、粉々に粉砕されたのであった。

署内に断末魔の叫びが響いた。

『東さん!!もしもし!東さん!?』


(あ・と・ひ・と・り)

『キャッ!!』

心臓が凍り付く様な声に、思わず悲鳴を上げる紗夜。

『ど、どうした、サヤ!』

気を失って倒れる紗夜を、富士本が支えた。

その『声』は、紗夜にしか、聞こえてなかったのである。

悲鳴とは言え、彼女が感情を声に出すところを、富士本は初めて見た。