混み合ったプラットホームにアナウンスが響く。

『間もなく4番線に通過電車が参ります。危険ですので白線の内側までお下がりください。』

女の子と母親は、一番前に並んで電車を待っていた。

電車のライトが近づく。

母親が、ゆっくり娘の頭を見下ろす。

顔には、何とも言えない喜悦の笑みが漂っていた。

娘の背中へ手を伸ばした時。

『ひゃあ!!』

母親の手を誰かが掴んだ。

その手に引っ張られる様に、母親の体が線路に消える。

『ドサッ。』

『大変だ!!誰か落ちたぞ!』

周りの人々が慌てて暗い線路を覗き込む。

『た・・・助けて!!』

起き上がった母親が、手を伸ばし、ホームへ戻ろうとする。

が、次の瞬間、その顔が恐怖に歪む。

『ひッ!だ…誰だ!く、来るな!・・・おまえは…』

手を伸ばす人々の思いとは逆に、母親は後ずさった。

『ばかやろう!!こっちへ!早く!!』

『ぎゃー!!』

恐怖の絶叫が、母親の口からほと走っていた。

『キキキキキキーーッ!!』

ブレーキ音がけたたましく響く。

『キャーーッ!!!』

無数の叫び声の前を、電車が通り過ぎ、止まった。

女の子はその光景を、悲鳴を上げることもなく、じっと見つめていた。