どうにか全員で石段を登りきったとき、そこには華やかな景色が待っていた。


神社の境内には屋台が並び、我先にとやってきた子どもたちが駆け回っていたのだ。


大人たちはベンチに座って談笑しているし、夕方まで誰もいなかった村とは思えない光景だった。


「屋台は後にして、早く行くよ」


その光景に圧倒されていた僕を促すようにユウジくんが手を引く。


僕たちが向かったのはお守り売り場だった。


奥には巫女さんの姿があり、祖母の持つ赤い花を見ると「おめでとうござます」と、うやうやしく頭を下げた。


それから巫女さんは勝手知ったる様子で赤い花を受け取ると、それに引き換えて赤いお守りをくれた。


真ん中に『生』と赤い刺繍で刻まれたそれを、祖母は大切ように両手で包み込んだ。


「帰りの石段に気をつけてくださいね。せっかく選ばれたんですから」