『ヒトミちゃんは、今日誰かいい人を見つけた』


歩きながら質問をする。


コンパと名のつくものの後の質問として間違っていなかったと思う。


けれどヒトミは少し首をかしげて『私はスキーの話をしてほしかったです』と、答えた。


僕は一瞬キョトンとしてしまい、そして慌てて頷いた。


『そ、そうだよね! だって僕らスキーやるんだからね』


最も当然なことをすっかり忘れてしまっていた。


他の人たちだって、きっとコンパは別物として捉えていたと思うけれど、ヒトミだけは純粋にスキーについて聞きたかったのだ。


だからあんなに大人しか会ったのだと、ようやく気がついた。


『よかったら、僕ならいつでもスキーの話をするよ』


僕はポケットの中に手を突っ込んでスマホを取り出した。


ヒトミは戸惑った様子で瞳を泳がせた後、コクリと頷いてピンク色のスマホをバッグから取り出した。