居酒屋から外へ出てそのまま解散という流れになったとき、僕は駅へ向かう彼女を追いかけた。


普段だったらストーカーとか変質者だと思ってあざ笑う存在に、僕は自分からなったのだ。


『あの、ヒトミちゃん!』


名前はコンパのときに聞いていた。


そして、女の子は『ちゃん』男の子は『くん』とつけて呼ぼうと、調子のいい男子が取り決めていた。


だからこの時も僕は気楽にそう呼ぶことができた。


ヒトミは立ち止まり、驚いた顔で振り向いた。


『危ないから駅まで送っていくよ』


『あ、ありがとうございます』


ヒトミは蚊の鳴くような声で頷き、僕たちは並んで歩き出した。


外はすでに真っ暗で、歩いているのは僕たちみたいな学生と、よっぱらいのサラリーマンくらいなものだった。