僕の腰には大ぶりな鈴がつけられていて、これは村に来てからヒトミが貸してくれたものだった。


あのときはまだ、この鈴が役立つときが来るなんて思ってもいなかったけれど……。


物悲しい気分になってきたとき、ようやく石段の上部が見えてきた。


境内は真っ暗で自分たちの歩く足音だけが聞こえてくる。


「あっちだ」


今度はユウジくんが先に立ち、神主さんの住居スペースへと足早に向かった。


お守り売り場の裏手に回ると明かりの灯っていない玄関があり、2人で顔を見合わせた。


窓からの明かりもなく、もしかしたら留守をしているのかもしれない


100年に1度の祭りも終わっているし、その可能性は高かった。


ユウジくんが一歩前に出て玄関チャイムを鳴らした。


家の中からピンポーンと音が聞こえてくる。


それでも誰かが出てくるような気配はなくて、もう1度鳴らす。