「え、でも……」

「どこに傷があるのか、自分でわかんないし」

 そりゃ、そうだけど。

 スマホでインカメラで見るとか、あとでトイレの鏡で見るとか、いくらでも方法あるじゃん……。

 戸惑うわたしに、由利くんが「ん」と左頬を向けてくる。


「青葉、早くー。授業始まっちゃう」

 どうせ始まって五分もしないうちに机に伏せて寝ちゃうくせに。

 由利くんがわたしの顔を横目にじっと見ながら、急かしてくる。


 もう、仕方ない……。

 わたしが絆創膏の包みをベリッと剥がすと、由利くんが黙って目を閉じた。

 睫毛長いな……。

 目を閉じていても綺麗な由利くんの顔。その白い肌にできたすり傷は目立つ。

 痕が残らないといいけど。浅い傷だから、大丈夫かな……。

 由利くんの頬の傷に絆創膏をあてる手が、ドキドキして小刻みに震える。

 絆創膏が捩れたり傷からズレたりしないように慎重に貼り付けると、わたしは無意識に息を止めてしまっていた息を一気に吐き出した。


「できた。これからは、守るつもりのない約束はしたらダメだよ」

 緊張でまだ少し震えている指を手のひらに握り込みながら笑うと、由利くんがわたしを見つめて目を細める。