窓際の前から二番目。

 そこそこ先生の目につく場所に座っているくせに、午後の授業が始まって早々に居眠りを始めた由利(ゆり) 圭佑(けいすけ)は、ホームルームが終わってもまだ机に伏せている。

 ゆるめのパーマがかかった薄茶色の髪が、柔らかい午後の陽射しを浴びて輝く。

 ときおり窓から吹き込んでくるそよ風が、ふわふわの毛先を揺らす。

 帰宅準備を始めたクラスメートたちが椅子から立ち上がり教室がザワザワとし始めても、机に伏せた由利くんは一向に起き上がる様子を見せない。

 よくそんなに眠れるな。陽だまりのなかの猫みたい。

 いや。あれだけ寝れるなんて、もはや赤ちゃんなのかも……。


 窓際の後ろから二番目。

 そこから立ち上がったわたしは、微動だにせずに眠る由利くんを横目に見ながら、そのそばを通過した。

 そのとき。

青葉(あおば)ー、帰んの?」

 低く掠れた甘えるような声が下から聞こえてきて、スカートがぎゅっと引っ張られる。

 振り向くと、まだ机に上半身をだらりと預けたままでいる由利くんが、顔だけをこちらに向けていた。

 少したれ気味の、まだ眠そうな瞳が、上目遣いにわたしをジッと見てくる。