「べつに焦る必要はないんじゃない」
「……へ?」
「だって瑠衣は今、恋よりお菓子作りに夢中だろ?」
図星をつかれて少し恥ずかしくなってしまった私は、「うっ……」と言葉に詰まる。
たしかに私は、恋よりもお菓子作り。
まるで花より団子的な意味だ。
「それを無理してまで周りに合わせて恋する必要はどこにもない。瑠衣が恋したいって思ってからでも遅くはないんじゃねーかな」
先輩にそう言われると、なぜか。
「……そう、ですよね」
すごくホッとしてしまった。
どうしてだろう?
「まぁ、瑠衣から恋の話聞けるのはまだまだ先になるんだろーけど」
安堵したのも束の間、先輩は少し意地悪なことを言って、それから。
「でも、瑠衣が恋するなら相手は俺だったらいいなぁ──…なんて俺は思ってるけど」
「……へ?」
私は、目をぱちくりさせて頭の中で言葉をリピートさせる。



