さらにぐいっとそれを寄せるから、唇に微かに触れるお菓子。
甘い匂いがほのかに香って、「ぐーっ」とお腹が反応する。
「ほら、食いたいって言ってるぞ」
それを聞いた先輩は、クスッと笑うから、すごく恥ずかしくなって小さく縮こまる。
「……あの、先輩、食べるので、手を……」
私の言いたかったことが理解できたのか「ああ」と頷いたが、なぜか先輩は手を離してくれなくて。
「いーからこのまま食べてみ」
「へっ?!」
「ほら早く。時間ないって」
焦りに焦らされて、正常な判断ができなくなった私は、先輩が持っていたそれをそのままパクリッと食べる。
これじゃあ味とか感想とか考えるよりも頭から湯気が出る……。
「ど?」
「……おいしい、です」
「だろ。すげーうまいよな」
先輩は、まるで自分が作ったかのような言い方をしていた。
だから、あまりにもおかしくって。
「……なんで先輩が得意げなんですか」
と、ふふっと笑ってしまう。



