「さ、才能なんてない…ですよ…!」
そんな大それたものなんてないよっ。
私、先輩が思ってるほど完璧じゃないもん。
「私、最初から上手にできたわけじゃないんですよ。はじめのうちは何度も失敗してました」
「へぇ、瑠衣が?」
「はい。何度も何度も失敗して、なんで私は上手にできないんだろうってめげそうになったこともあって……」
少し昔のことを思い出しながら、懐かしいと思うと同時に。
「やっぱり私には向いてないのかなぁ…って、お菓子作るの諦めようって考えたこともありました」
なんだかそれが恥ずかしくなって、目線を落とす。
だけど、お菓子作りを嫌いにならなかったのは、きっと……
「だけど……お母さんがいつも優しかったんです。一度失敗したら今度はそれを失敗しないように次頑張ればいいよって。そうしてそれを繰り返していくうちに人は成長していくんだよって言ってくれて」
お母さんが、いつも優しかった。



