角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。


先輩の言葉を聞いて、ある日の記憶が手繰り寄せられる。


「ああ、うん。中庭で寝てたとき、糖分が足りなさすぎて動けなくなった。で、横になってたらいつのまにか寝てたって話」


……やっぱり、そうだったんだ。

あの日は、体調が悪いのかと心配してたけど、そんなことがあったなんて……。

何度か声かけても返事なかったから、びっくりしちゃったけど。


「で、目が覚めてそばにお菓子あったときは誰が置いていったんだろうって少し驚いたけど」

「うっ……。黙ってお菓子置いていってしまってごめんなさいっ」

「いや、むしろ感謝してるから。あれなかったら家まで帰れなかったと思うし。起きて速攻食べたわ」


あの日は、家庭科の授業でクッキーを作ったんだったよね。食べずに残しておいてよかったぁ……。


「つーか、なんで瑠衣のお菓子ってこんなにうまいんだろーな。やっぱ生まれ持った才能なのかね」


マフィンを見つめながら、突然先輩がそんなことをつぶやいた。