「でも瑠衣が困るなら、行かない。ここで待ってる」
困る、わけじゃないんだけど……先輩には悪いこと言っちゃったかな。
どうしよう、空気が少しだけ重たくなっちゃった。
「それで今日は、なに作ってきてくれたの?」
「き、今日は……マフィンを作ってみました」
お菓子の入った袋を先輩に手渡す。
「これ色違うけど、味違うの?」
「あ、そうです。こっちがハニー味で、こっちがチョコ味です」
説明をすると、「へえー」まじまじと先輩はお菓子を見つめる。
やっぱりお菓子を見る先輩は、少し子どものようで可愛い……。
「うわ、めっちゃいい匂い」
まだ食べてないのに先輩の表情は、すごく緩んでいて、思わず笑ってしまう。
「なに?」
「あっ、いや……先輩がすごく嬉しそうだったので……」
つい本音が漏れてしまうと、それを聞いた先輩は「は?」ポカンと固まる。
「……俺が嬉しそう?」
そして、みるみるうちに表情が一変するから。



