「まさか俺が誰かに自分の連絡先教えることになるとはなー」
えっ、それって……。
「今まで誰にも教えたことないんですか?」
「うん。女子に聞かれても絶対教えない。どうせくだらない連絡とか面倒なだけだからさ」
くだらない連絡……それって今までにそういうことがあったってことかな……。
「えっ、でも私は……」
女子ってことは私も含まれるんじゃ……。
「あ、瑠衣は別な。俺にとって瑠衣は特別だから」
えっ……?
「わ、私が……」
……先輩にとって特別?
よしっ、と小さく言ってボールペンの芯を戻す先輩。
「そ。だから、絶対他のやつに教えるなよ。特に女子。約束してよ」
先輩は、すごくかっこよくて人気者でファンまでいるのに、こうやってお話できていることが不思議なくらい現実味がない。
だけど、先輩ともっと一緒に過ごしてみたいって思ったのは私。
「は、はい……」
自分の手のひらに視線を落とすと、控えめに小さく書かれた数字。
これが先輩と私を繋いでくれる魔法みたいだと思った。



