角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。


「……あれ……」


スカートのポケットにお目当てのものを探すが、見当たらない。


「どうした?」

「私、スマホをかばんの中に入れっぱなしだったみたいで……」


もし次も先輩が教室まで迎えに来るって言ったらどうしよう……それはさすがにまずいよね…っ。次こそファンのみんなになにを言われるか……!!


なにか持ってないかな。慌ててキョロキョロ制服を確認する。


あっ、これ使えそう……!


「あのっ、ボールペンでここに番号書いてくれませんか?!」


胸ポケットから取り出したそれを先輩に突き出すとぽかんと固まった先輩。


「なんでスマホがなくてボールペンがあるわけ」


と、言ったあと少しだけ吹き出して笑う。


「えっとそれは、たまたま偶然といいますか、奇跡と言いますか……」


しどろもどろになりながら説明すると、


「なんだそれ……ま、いーや。貸して」


クスッと笑ったあと、先輩がボールペンを受け取った。

そして、器用に動く手が、ゆっくりと11ケタの数字を書き記していく。