興味津々、といった目でミツヒデはイヅナを見る。だが、イヅナが焦りを隠し切れていないことがわかると、「次はどんな拘束具が出てくるんだ?」と煽り始めた。

「ッ!」

近付いてくる妖に対し、イヅナは拘束具を投げ付けて捕らえていく。拘束具は全て無くなり、イヅナは心に絶望を覚えたままゼエハアと激しい呼吸をする。

「ほらほら、まだこんなにも妖はいるぞ?」

ミツヒデが指を鳴らし、妖がまた数体イヅナの周りを取り囲む。もう核を見つけて殺すしかないのか、そう思えば思うほどイヅナの手は震える。

この人たちは望まれて誰かの元に生まれ、学校で学び、友達や特別に想う誰かができ、夢を追い、仕事をして、幸せを感じて生きてきたに違いない。

まるで、アレス騎士団に入団したばかりの自分に戻ってしまっている。この状態が危険だとわかっているのに、伸ばされた鋭い爪のついた手を斬ることが、イヅナにはできなかった。

「イヅナちゃん!」