「今日もまた、ノート見せて」
やっぱり、と呆れるあたしと、ヘラっと笑う陸斗。そして大きな溜息を吐く趣里。
「やだ」
「何でだよ」
「この前も見せたし、大体何のノート?」
「現国、今日提出じゃん?俺ノートとらない主義だから」
「何その主義。自業自得じゃん」
「あ?」
「普段から真面目に授業受けてないから後で困るんだよ」
「はー?柑奈の大好きな薫先輩なんかよくサボってただろ」
“大好きな”を強調して馬鹿にしてくる陸斗に、薫くんが高校生だった時の事を思い出す。
そういえば薫くんはよく授業サボってたなぁ、
薫くんのサボり場所といえば屋上か図書室で、あたしはよくそこに行っては「ちゃんと授業受けろ」と怒られていた。
自分はサボっているくせに、と不貞腐れていたけれど、薫くんはサボっていたのに成績は良かったし、あたしはそうではなかったから、今なら少しだけ、薫くんの言っていた意味がわかるんだ。
もちろんサボるのは良くないけど。