結局、あたしは鳴り止まぬスマホをどうする事も出来ずにただじっと見ていた。
少ししてその音がなり止むと、途端に黒いものが胸の奥から這い上がってくる。
ドロドロとした、重いもの。
それがあたしの身体中に巻きついて苦しくなった様な感覚になった。
「初音って、誰だよ⋯」
ポツリと呟いた言葉は薫くんには言えない。
だって、そんなの面倒臭い女じゃん。
少しでも薫くんにそう思われたらと思うと怖くなる。
それに、もしも、もしも⋯嫌な返事が返ってきたら⋯それこそ最悪だし。
でも、気になる。
というか、前から気になってた。
薫くんが珍しく名前で呼ぶ初音さんの事。
「うーん⋯、モヤモヤする⋯」
そのモヤモヤはジュクジュクと、ゆっくり、確実に、あたしの心に黒い染みを作っていった。



