「ダメ?薫くん」


パフェ用の長いスプーンを置いて薫くんを見つめる。


「ポップコーンは薫くんの好きな塩味でいいよ」

「⋯」

「なんならジュースだって奢ってあげるよ」

「⋯」

「一緒に観ようよ」



ここまで言えばきっと、多分、一緒に観てくれるだろうと期待を込めて薫くんの反応を待っていると、「柑奈」と、ニコリと笑った薫くん。


その笑みはもう、この世のカッコイイものと綺麗なものを全部詰め込んだんじゃないかってくらい眩しくて、あたしの胸を抉る様に高鳴らせる。



だけど心無しか、その笑顔はどこか黒いような⋯?




「柑奈」

「薫くん⋯?」

「俺、明日バイトだから」


「え?」


「明日バイト入ってるから、映画には行けないし柑奈とも会えない」


「え?バイト?」

「そう」



バイト⋯。



「えぇ⋯、残念⋯」



ガクッと、身体が傾いた。