「見てみて薫くん、チョコバナナあるよ」
「チョコバナナなんて家でも作ろうと思えば作れるだろ」
「分かってないなあ、お祭りで食べるから美味しいんだよ」
人混みの間を縫いつつ、色んな屋台を見て回る。
チョコバナナにわたあめ、やきそば、らくがきせんべい。
「うわ、本当に恥ずかしいからやめてくんない?」
「なんで?愛を込めて書いたんだよ」
らくがきせんべいで「かおるくん」と文字を書いて周りにハートを散りばめていたら隣から本気で嫌そうな声が聞こえてきた。
「馬鹿なの?本当に馬鹿。大馬鹿」
「馬鹿馬鹿言い過ぎじゃない?」
「本当の事でしょ」
まあ、シャイな薫くんは嫌がるだろうなとは思ってたけど、どうせこのらくがきせんべいはあたしが食べるんだし何を書いても自由でしょ。
「ラブラブだね~」
「えへへ」
「可愛い彼女だね。はい、楽しんでね」
「ありがとうございます!いただきます」
屋台のおじちゃんもニヤニヤあたし達を交互に見て、出来上がったせんべいを差し出してくれた。
それを満足そうに食べるあたしを見て薫くんはげんなりした表情で呟く。
「柑奈には羞恥心ってもんがないの?」
「全然あるよ」
「いや絶対ないよ。この場で前転してって言っても喜んでしそうだし」
「薫くんの中であたしどんなイメージなの?」
さすがのあたしにも羞恥心くらいある。あまり馬鹿にしないでもらいたい。
だけど、
「薫くんと一緒なら出来るかもしれない…!」
「するわけないでしょ」
「そんな怖い顔しないでよ」
思いっきり睨まれて思わず肩が跳ね上がる。
氷の様な冷たい視線。さすがに夏の夜でも冷たすぎる。



