ジリジリと太陽が照りつける。
もう溶けちゃうんじゃないかって暑い。
でも、これが夏!夏!夏!
「夏だあああああ!!!」
「ほんっとうるさいんだけど」
「だってお祭りだよ?花火大会!今年初の!」
「はいはい」とあたしとは正反対のテンションな薫くんはこの暑さに少しイラついていらっしゃる。
でもそんなのはお構い無しだ。
なんたって今日は薫くんと地元のお祭りに行く約束をしたんだ。薫くんの塩対応なんて屁でもない。
張り切って浴衣も用意した。
白色の記事に赤い牡丹が描かれた涼しそうな浴衣だ。
「どう?可愛い?めちゃくちゃ似合ってる?」
浴衣を見せつけるようにくるん、と体を一回転させれば、薫くんは少しだけ口角を上げた。
「凄いじゃん。柑奈って浴衣着れたんだ」
「今日の為に動画とか見て覚えたんだよ。褒めて褒めて」
「ふうん」
せっかく浴衣を着たというのに、薫くんの反応は相変わらず薄い。
可愛いとか似合ってるよとか一言くらい言ってくれてもいいじゃん!って思うけど、これが薫くんらしいといえばらしい。
「薫くんも浴衣似合ってるよ!すごいかっこいい!」
そして今日はなんと、薫くんも浴衣を着て来てくれた。
涼しそうな紺色の浴衣はなんともまあ、薫くんによく似合っていて。
普段の薫くんも100%かっこいいけど、今日はメーター振り切れの200億%かっこいい。
だらしなくない程度に見える鎖骨とか、しなやかな体の線とか。
普段よりも色気もあって人目見た瞬間抱きついた。
すぐに引き剥がされたけど。
「もう本当にかっこいい!ドキドキする」
「浴衣ってそんないい?」
「浴衣が嫌いな女子なんていないよ」
「そ」
薫くんの浴衣姿をしっかり目に焼き付けようとガン見すれば「視線がうるさい」なんて嫌そうな顔をされた。
でもこれは焼き付けておかないと勿体ないと思うんだ。
なんて考えているとふいに薫くんがあたしの手を取って歩き出す。
「手繋いでくれるの?」
「そうしないと絶対迷子になるでしょ」
「まあ、可能性はあるね」
「でしょ」
地元のお祭りとはいえ、花火も上がるし人は多い。
確かにこれは手を繋いでいないと途中ではぐれてしまうかもしれないと思いつつも、内心はルンルン気分だ。
薫くんから手を繋いでくれるなんて滅多にないし、お祭りありがとう~!って叫びたい。さすがにここで叫ぼうもんなら周りから変な目で見られて薫くんが「帰る」と言い出しそうだからしないけど。



