この日からだ。
また、柑奈が俺の後を追いかけ回す様になったのは。
下らない話をして聞いてもない事を喋り続ける。前髪を切っただとか昨日は何をして過ごしただとか、英語の授業が苦手だとか。
俺が返事を返さなくても喋り続ける柑奈は、何故か楽しそうで。
カラカラとした明るい笑い声が耳障りではなく心地よいと感じる様になった事を自分でも薄々気付いていた。
突然雨が降り出した日、困った顔で曇天を見上げる柑奈を一度は突き放した。だって、焦ったから。
まさか自分がこのしつこい後輩に惹かれ始めているなんて思いたくなかった。
誰かを好きになった事なんてない。
それなのにまさかコイツを?俺が?ありえないでしょ。って認めたくなかったから。
だけど妙に心が擽ったくて結局ビニール傘を買って戻ってしまった時、認めざるを得なくなった。
一緒に傘に入れて帰らなかったのは、小さな抵抗だった。
「こういうの、ずるいです⋯」
傘を受け取った柑奈がそう呟いて照れくさそうに頬を染める。
それだけで、たったそれだけの事が嬉しかった。



