最初は、しつこい女ってだけ。

ウザくてしつこくて、ストーカーじみた、変な女だとしか思っていなかった。

それが天変地異でも起こったのか、一年間付き纏ってきた女に落ちてしまった。


だけど、こんな事を言うと柑奈に怒られてしまうかもしれないけれど、付き合った時だって柑奈に惹かれていたとはいえ、きっと別れるだろうなあ⋯と思っていたくらいだ。



それが今じゃ、俺の方が柑奈なしではダメになっている。


抜け殻みたいに、失恋した女みたいに、立ち直れないほど、引きずっている。







一人で座るソファーはこんなに広かったか。

一人で食べる飯はこんなに味気なかったか。

一人の部屋はこんなにも静かだったか。




一人暮らしだし付き合っていた時だって一人の時間はあったはずなのにまるで心の虚無感と比例している様に全ての事柄が色褪せて見える。


隣でけらけら笑う声も聞こえない。

子どものように温かい手のひらに触れることも出来ない。





口にするのが照れくさくて、一度口にする度に俺の体から一つ零れていってしまうようであまり言った事のない言葉。




「好きすぎるのは俺の方だった」




今、初めて柑奈の気持ちがわかった気がした。

不安な気持ちも、言葉を求めてしまう気持ちも。



「ごめん」なんて言葉じゃ足りない。許されない。

「やり直したい」なんて都合が良すぎるかもしれない。



だけど、どうしても柑奈とこのまま終わるなんて納得出来なかった。

今、一人で何をしているのか。誰かといるとしたならそれはどこの何奴なのか。



常に頭の中は柑奈でいっぱいだった。