それから数日間、クソみたいな日々を過ごした。
笑うこともなければ、何の感情も湧かない。
まるで、柑奈と付き合う前のようなつまらない人間になっていた。
付き合う前、つまり高校生の俺は今よりもっと全ての事柄に対して冷めていた。
人の感情にだって鈍くて、冷たい人間だったと思う。
それを変えてくれた────というには大袈裟すぎる気もするが、柑奈と一緒にいるようになって確実に俺の中の何かが変わった。
面倒だけど、ムカつくけど、そんなところも何だかんだ好きで。緩みきった笑顔を見る度、じんわりと何かが湧き上がってくるような。
今まで付き合った奴もいたけど、ソイツらとは決定的に違う。
それは目に見えるようなものではなく、実在のないただの感覚に似たものだけど、確実に俺の中にある、柑奈に対する“好き”だという想い。
その想いがあるだけで、女に対してこうも感情が揺さぶられるのだと、初めて知った。
寒く、小っ恥ずかしい言い方をすれば、
初恋
というものなのかもしれない。