それでもなんとか涙を堪えながら拭いながら言葉を続けていく。
「本当はね、あの時言った酷い言葉たちは本心じゃないよ。頭も心もグチャグチャになって、つい言っちゃっただけで…」
言葉は取り消せないけれど、これだけはわかって欲しい。
「あたしまだまだダメなところいっぱいあるし、全然子どもだしわがままだし欲張りで、困らせちゃって怒らせちゃう事もあるかもしれないけど、薫くんを好きな気持ちは本物だから…、絶対誰にも負けない…」
「うん」
「あたしの一番はいつだって薫くんだよ」
「…」
「一番大切にしたい気持ちは薫くんを好きって気持ちだし、一番大好きなのも薫くんだけ」
「…うん」
「だから…、だからっ…、」
もう一度付き合ってください。
そう言うのはあまりにも勝手だろうか。
さすがに、それはダメかなあ。
なかなか最後の言葉を言うことが出来ないあたしに薫くんが「柑奈」と名前を呼ぶ。
やっぱりあたしは薫くんに名前を呼ばれることが大好きだ。
「俺もこの前はごめん」
「…っ」
「どうすればいいのかわかんなくて、イラついて柑奈に当たった」
「薫くん…」
「柑奈の気持ちを疑ってたわけじゃなくてただ…、ただ、怖かった。好きって言葉をいつか言われなくなるんじゃないかって。上限なんてないけど、いつか段々と柑奈がそういう事言ってくれなくなっていくんじゃないかって不安で、イラついて、ダサいけど柑奈に八つ当たりしたんだよ」
「…っ」
「柑奈のこと傷つけて怒らせてる自分にイラついた。焦ってた。初音のせいで柑奈が離れたらどうしようって。でも素直になるなんて一番苦手だしどうしたらいいかわかってなかった」
「…うん」
「初音とは本当に何もないけど、自分のこと棚に上げて柑奈の友達に嫉妬してた」
「うんっ…」
「ずっと、後悔してた」
「…」
「年上のくせに、普段澄ました顔してるくせに、柑奈に甘えてたんだよ。柑奈なら全部許してくれる、わかってくれる。絶対俺から離れないって調子に乗ってた」
今までこんな風に薫くんが正直な気持ちを包み隠さず話してくれた事はなかった。
こんな風に気持ちをさらけ出してくれた事はなかった。
こんな風に思っていたんだって、不安やどうしようもないもどかしさと、どうしたらいいのかわからない焦りを感じていたんだって、わかった。
むき出しにされた薫くんの想いは痛いほど、苦しいほどあたしの心に入ってくる。
悲しくない。むしろ、嬉しい。
まるで心と心が重なるみたいに、溶け合うみたいに、さらけ出された気持ちが愛しくて。



