小さな声で「お邪魔します」と言いながら、薫くんに手を引かれるがまま、二人掛けのソファーに座る。
「ココアでいい?」
「え、あ…いいよ、そんな」
「手凄い冷たいから、とりあえず温まれ」
ピッと暖房の電源を入れてケトルでお湯を沸かす薫くんの後ろ姿を見つめる。
会いたくて、触れたくて、今立ち上がって傍にいけば触れるという、この一週間何度も願った事をすることが出来る。
だけどまだ今は、すぐ近くにいる薫くんに触れることは出来ない。
「はい」
「…ありがとう、」
コトンと置かれたマグカップはこの前まであたしが使っていたもので、捨てられずにいた事に嬉しくなる。
ふー、ふー、とココアを冷ましてから一口飲むとあたし好みの甘いココアの味がして、市販の粉ココアだけれど薫くんが作ってくれたというだけで物凄いく価値のあるものの様な気さえしてくる。
微かな暖房の音だけが響く室内で、隣に座る薫くんにとても緊張をした。



