ハニーシガレット 【完】



「何で泣くんだよ」



呆れた様にあたしに言った薫くんの表情はそれはもう面倒そうで。



「泣いてるんじゃないよっ⋯」

「じゃあ何?」

「泣いてるんじゃないし⋯」



答えになない答えにはぁ、と薫くんの溜息が聞こえた。


別に、泣いてるわけじゃない。

ちょっと視界が歪んだだけで、涙は流していない。


今までに何度も薫くんから「すぐ泣く奴は嫌い」って言われてきたし、ここで泣くような女じゃない。




「⋯っ、」



暖かみのある木のテーブルの下でぎゅっと拳を握る。


それでも視界はどんどんボヤけていって、今度は強く、唇を噛んだ。



「っ!」



と、強く噛みすぎたのかピリッとした痛みと共に口内に広がる鉄の味。