「陸斗といると笑顔になれる。大切にしてくれるっていうのも笑わせてくれるっていうのも嬉しかったし、陸斗なら本当にそうしてくれるんだろうなって思った」
「…うん」
「だけど陸斗の想いに、自分の気持ちに向き合って考えて考えて考えたとき、正直な気持ちを言うと、あたしはまだまだ薫くんが好きで、望みが薄くてもヨリを戻すなんて出来なくても他の人を選ぶなんて出来なかった。
泣かされても傷ついても、薫くんのこと大好きだって思った」
「…っ」
「薫くんのこと忘れるなんて考えられなかった」
「…、」
「そんな気持ちのまま陸斗を選ぶなんて出来なかった」
この一週間スマホを見る回数が増えた。
趣里と話しながら、陸斗と笑いながら、薫くんは何をしているんだろうって考えていた。
夜眠る前、頭の中に浮かんでくるのはいつも、薫くんだった。
遊園地でコーヒーカップに乗ったとき、手を振ってくれた陸斗を見て新鮮で嬉しかった。けど、その時ですら頭の中には薫くんがいて。
薫くんは遊園地なんて人混み嫌だって来てくれないだろうし、もし一緒に来てくれたとしてもコーヒーカップに一人乗るあたしに手なんてふってくれないだろうなって。
だけどつまらなそうに、呆れながらもコーヒーカップに乗るあたしを見てくれるんだろうなあって、手を振るあたしに表情一つ変えず他人のフリをするんだろう。
冷たいなあ、そう思うけれどそれが薫くんならあたしは凄く薫くんらしいなあと思ってそれすらも愛しく感じてしまうんだろうなって、あの時陸斗を見て思ったんだ。
「だから、ごめん。陸斗の気持ちには応えられない」
そう言った瞬間、心の中は全然晴れてなんてくれなくて。チクチクとした胸の痛みだけが残った。
それは後悔とかじゃなく、陸斗の想いが本当に伝わってきたからこその痛みなのだと思う。



