もしかしたら、急用かもしれない。
もしかしたら、間違えて掛けてきたのかもしれない。
もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら。
胸の中に芽生える呆れちゃうくらい滑稽な期待。
淡く、都合良く、可能性の薄い期待ばかりしてしまう。
──────だけど。
「……、」
「…いいの?」
「うん…」
画面に映されていた赤い部分を押すと、手の中の震えが止んでゴンドラの中はさっきまでの静けさを取り戻した。
「柑奈は出ると思った」
「…そう…?」
「薫先輩からの電話を切るなんて絶対しないって思ってた」
「…」
「だから今ビックリしてるし嬉しい」
「…っ」
「ありがとな」
陸斗は柔らかく笑うと、「うお、もう地面近くなってんじゃん!意外と短かったなー」と窓の外を見て騒いでいた。
それを見ながらあたしは、その言葉の重さを感じていた。
……陸斗はありがとうと言ったけれど電話に出なかったのは陸斗の為とか遠慮してとかじゃない。
もちろん、今は、今日は、陸斗と一緒にいて、陸斗がどれほど真剣な思いを抱えながら今日過ごしてくれたかわかっているからそんな時に薫くんからの電話に出るなんてちゃんと向き合っていると言えるのか疑問だったっていうのもあるけれど。
今電話に出たとしてもあたしは薫くんに何も言えないって思ったからだ。今はまだ、薫くんと何かを話せる状況ではないし、もしあの電話が嫌な内容だったらって怖気付いたからだ。
だからあたしは陸斗からお礼を言われるような、そんな人間ではないんだ。



