「だから少し距離を置いて、自分の心と向き合って、そうしてから柑奈は何が一番大切でどうしたいのかを決めればいいよ」
「⋯うん」
「こんなこと言ったら今すぐに薫くんのところに行きたいのにーってもどかしくなっちゃうかもしれないけど今二人はお互い混乱しちゃってると思うから」
「うん⋯そうかもしれない」
仲直りしたい。その想いだけで薫くんに会いに行ったら余計に拗れてしまった。
心が整理されないままで溢れ出る感情をそのまま垂れ流してしまった。
だからこそ、一度落ち着く時間が必要なのだと趣里の言葉で更に強く思った。
「ちゃんと自分の気持ちと向き合ってみる」
あたしは薫くんとどうなりたいのか。どうしたいのか、どうして欲しいのか。
何が一番大切なのか。
落ち着いて考える時間が必要だ。
「でもそれって陸斗の気持ちを利用することにならないかな?」
不安なのはそれ。
陸斗が一週間返事は要らないと言っていたとはいえ、あたしが陸斗を好きになることはないと思う。
視線を下げたあたしに趣里がくすりと笑う。
「そうだね、でもそれは陸斗が望んだことだからいいんじゃない?」
「⋯そういうもの?」
「ま、陸斗だって答えはわかっているだろうし陸斗も気持ちの整理が必要なんじゃないかな?あとどんなに望みが薄くても最後の悪足掻きをしたかったんじゃない?」
「⋯、」
「陸斗も真剣だから柑奈も真剣に考えてあげてよ。人の気持ちなんて少しの事で変わる可能性もあるんだから」
「!!」
まるであたしが陸斗を好きになると言っている様な趣里の言葉に下げていた視線を突発的に上げれば涼し気な目元を細めて笑う趣里がいて。
「そんな驚かなくてもいいでしょ。でも、だかこそ柑奈もたくさん不安になったんじゃないの?」
クスクスと笑う趣里を恨めしく見つめる。
⋯でも、趣里の言う通りだ。
人の気持ちなんていつどんなきっかけで変わるかなんてわからない。
それは良くも悪くも、だ。



