「柑奈、もう一度話をしてみたら?」
「そんなの無理っ」
「でもそれじゃあ何も進まないよ?このままでいいの?」
「話てもまた酷いことばっか言っちゃうっ、もう傷つけるのも傷つけられるのも嫌!」
優しく諭す趣里にわがままな子どもみたいに泣くあたし。
きっと傍から───陸斗から見たこの光景は呆れ返るほど滑稽なものだろう。
「────趣里、放っておけよ」
いつもおちゃらけている陸斗の声とは思えない真剣で低い声にビクリと身体が跳ねる。
「なに?泣いてる柑奈を放ったらかしとけって言うの?」
あたしが驚いてしまったせいで陸斗が怒っていると勘違いした趣里が強い口調で反論するけれど、陸斗は怒っているみたいではなかった。
「柑奈」とあたしを呼ぶ声がやけに優しかったから。
「柑奈、お前薫先輩と別れたんだろ?」
「っ」
「それはお前がした選択なんだろ?」
顔を覆って泣き顔を隠すあたしの手を取り見つめ合うように瞳を合わせた陸斗。
日本人らしい黒い瞳も、手首を掴む手の感覚も、薫くんとは全然違った。
「薫先輩のことが大好きなお前が別れたいって言うくらい苦しかったんだろ?辛かったんだろ?」
「⋯っ」
「なら、もうそれが答えじゃねぇの?」
「っこ、たえ?」
「別れて正解なんじゃねえの」
「っ!」
「後悔したってそれが正しい選択だったんじゃねぇの」
「なに、⋯りくと、」
「その選択をしてなきゃそれ以上にお前は泣いて辛い思いしたと俺は、思う」
きゅっと掴まれた手首に力が入る。
「薫先輩と柑奈じゃ幸せになんてなれなかったんだよ」
陸斗のその言葉は重く、重く心にのしかかった。



