「薫くん⋯、」
すっと離れた手のひらがすごく寂しい。
これで本当に終わりなの?
ねぇ、やだよ。
「薫くんっ⋯」
「別れたいんだろ?ならもう終わりな」
「っ」
「次はちゃんと優しい人見つけろよ」
そう言って私を部屋の外へと出した薫くんは涙さえもう拭ってはくれない。
次、なんてどうしてそんなこと言うの。
もつれた足を何とか整えて、部屋の外へと押しやる薫くんを振り返ればその表情はまるで見たことない人みたいに、⋯⋯ううん、初めて出会ったときみたいに何の感情もなかった。
怒ってるから冷たいとかじゃなくて、本当に無だった。
「薫くんっ⋯!」
「じゃあな、」
「っかお、」
バタン、と大きな音を立てて閉められた扉。
あまりにもあっさりと終わったあたしたちの関係。
恋の終わりってこんなに簡単に終わるものなの?って、初めての恋人が薫くんだからそれすらもわからなくて、ただただ自分の全てに嫌気がさして後悔した。
─────別れたかった。苦しいから、逃げ出したかった。
もうこれ以上、初音さんがチラつくのは辛かった。
傷つけるのも傷つけられるのも嫌だった。
別れようって言われることが怖くて、先に言ってしまおうと思った。
だから、「別れたい」って口にしたはずなのに、いざ薫くんが別れることを受け入れたらどうしようもない寂しさと悲しみに襲われた。
別れたい、別れたくないをグラグラと揺れていた天秤は瞬く間に後者に傾いたんだ。