薫くんとの間に僅かな沈黙ができて、ハアという重いため息が鼓膜を揺らした。
気まずくて下げていた視線を上にあげれば、見たこともない薫くんの冷めた瞳とかち合う。
「お前の好きも相当軽いんじゃねえの」
冷たい言葉と冷たい声。薫くんの全てに温度がなくてあたしの体までひんやりと凍てついていく感覚になる。
「さっき俺に色々言ってたけど、柑奈の好きも同じじゃねえの?」
「っ軽いって、同じって、なに?」
全身が冷たくなっているはずなのに、ドクドクと動く心臓だけは恐ろしく熱を持っている。
息をひとつすることさえ、いっぱいいっぱいで。
薫くんの言葉の続きを聞くのが怖いくせに、続きを待っている自分がいた。
「そのままの意味だよ」
「っそのままって⋯?」
「いつも好きだのなんだの言ってるお前の方が軽いんじゃねえのってこと。それこそ俺の機嫌でも取ってんじゃねぇの?」
「っ」
「物にも人にも好き好き言いやがって、お前の好きって軽いんだよ」
やっぱり、続きなんて聞くべきではなかった。
多分、今まで薫くんに言われたどんな言葉よりも深く、深く、傷ついた。
ショック、なんて言葉では表せないほど心が抉られて粉々にされたような、そんな痛さだった。
寂寥感さえ覚えるほどに。
「好き」という言葉を疑われることは何よりも一番苦しかった。
だからこそ、さっきあたしが薫くんに言ってしまった言葉も薫くんにとって一番傷つくものだったのかもしれないと今更後悔してももう遅いんだ。



