ガリっと薫くんの唇を噛んだことで一瞬、手首を掴んでいた力が弱くなる。その隙に思いっきり薫くんの体を押した。
「やめてって言ってるじゃん⋯!」
「⋯柑奈」
「そうやって誤魔化さないで」
「誤魔化す?」
「こうしとけば大人しくなるって、そう思ってるんでしょ!?」
だから、あんな愛情もない激しいだけのキスをするんでしょ。
「初音さんの言う通りだよ⋯」
「⋯なに言ってんの?お前」
強く薫くんを睨むあたしを、眉を寄せて細められた冷たい瞳が貫く。
それが嫌だった。怖かった。寂しかった。
「あたしと薫くんは、合わないんだよっ⋯!」
もう、これ以上傷つくのも傷つけるのも、冷たい瞳で見られるのも何もかも嫌だった。早く、逃げ出したい。



