ハニーシガレット 【完】







そもそも、あたしはなに安心なんてしているんだ。

叩いたことを薫くんが責めなかっただけで何も解決していない。心のモヤモヤは少しだって晴れていない。



大体、話を聞いてたんならもっと早く出てきてくれれば良かったのに。
そうすればあたしはあんな酷いこと言われなくて済んだのに。

あたしが自分でリップを返すと言ったから、様子見をしていたのかもしれないけれど、あたしの意志を尊重してくれたのかもしれないけど。




ダメだ、もう、多分薫くんが何をしても何を言ってもあたしは不満に思ってしまう気がする。

そして何をして、何を言ってくれても自分が嫌にる。


薫くんに謝らせてどうするのって。



特に今は初音さんと会ったばかりだし、こんな状況だし、その上叩いてしまった事で気が動転して自己嫌悪に陥っているせいで心が落ち着かない。



少しでも気を緩めれば泣き喚いて薫くんに酷い言葉をぶつけてしまう気がする。




「どこ行くんだよっ」



だから今は薫くんと一緒にいてはいけないと、部屋の前から足を動かして帰ろうとしたのに。




「話、するんじゃないの?」

「今は話したくない」

「無理、俺は話あるから」

「っ聞きたくない!」




薫くんがあたしの手を掴んで逃げることを阻む。

話なんて、別れ話かもしれない。


そう思ったら何としてでもこの場から去りたかった。