「俺の家でいい?」
聞いておきながら既に向かっているのは薫くんのアパートの方向。
ファミレスとかガヤガヤした場所よりも静かな場所で話したかったあたしはそれに頷いた。
それ以降、会話のないあたしたち。
迎えに来てくれてありがとうって言いたかったけど、なにか言葉を発するのが怖くてやめた。
こんなんでちゃんと仲直りが出来るのかなと、どんどん不安になっていく。
暫く歩いて薫くんのアパートまでやってきた。
手は掴まれたまま、カンカンと外階段を登っていく。
と、階段を先に登りきった薫くんの足が止まった。
「⋯、」
明らかに表情を曇らせた薫くんの顔を二段下から見上げながら、胸がザワザワしていくのを感じた。
「薫くん?」
「⋯ちょっとここで⋯やっぱ一回降りて待ってて」
手を離して、そんな意味不明なことを言う薫くんにはてなマークが浮かぶ。一回階段を降りろってこと?どうして?
説明もなく「早く」と急かす薫くんにザワザワとしたものが広がっていき首を横に振った。
「意味わかんないよ、薫くん」
そしてトントン、と二段登り、アパートの廊下部分に足をつけた。



