濡れた視界の先で薫くんが傷ついたような顔をする。
ここで泣くあたしも狡いけど、ここで傷ついた顔をする薫くんも相当、狡い。
「⋯⋯かお、」
お互い黙り込んで、何を言えばいいのかわからなくて、静かな空間がより一層静けさを増した時。
意を決して薫くんの名前を呼ぼうとした。
何を言うなんて決めてなかったけど、このままではダメだと名前を、呼ぼうとしたのに。
ピリリリ⋯!とまるでタイミングを見計らったように鳴り響いた着信音に鼓動がドクンと脈打った。
それは突然大きな音で鳴り響いた着信音にビックリしたのもあるけれど、もしかしたら、と嫌な予感がしたからだ。
ドクンドクン、と心臓が音を立てる。
未だ鳴り続ける着信に出る気のない薫くんは鳴り止むのを待っているようだ。
ピリリ、ピリリ、
どんだけ待ってるんだって言いたくなるほど相手は薫くんに是が非でも電話に出て欲しいらしい。



