ハニーシガレット 【完】






「柑奈、とりあえず家入れって、」

「いやっ!」


また、薫くんがあたしの手を引こうとする。


「触られたくないっ」

「柑奈、」

「もうイヤっ⋯」


それを拒んで、一歩後ずさった。

もしかしたら初音さんに触れたかもしれない手で、あたしに触らないで。

どうせ、あたしがここまで怒って悲しくなってる理由もちゃんとわかってないくせに機嫌だけ取ろうとしないで。

さっきまで初音さんがいた家の中にどうして入ろうとするの。



欲張りで、そのくせ心の奥底に眠る感情を知られたくなくて今まで隠してきたけど、我慢した結果がこれならもうどうしたらいいのかわからない。


今までだって薫くんの事でいっぱい嫉妬したりしてきたけど、実際に薫くんを狙っている人がこんなにも身近にいたのは初めてで。

同じ大学で同じバイト先で。

薫くんがあたし以外で唯一名前で呼ぶ女の人。



こんなの、どうしたらいいのかわからない。



薫くん以外に付き合ったことないんだもん。



どこまで言ったらいいのか、何を言ってはいけないのかも、わからない。